活かす読書

読んだ本を、どう活かすか? セミリタイヤしたikadokuが、週に5冊、ビジネス書・自己啓発本・投資本・ベストセラーなどの本を紹介します。


2014年10月 | ARCHIVE-SELECT | 2014年12月

| PAGE-SELECT |

≫ EDIT

死を悼む動物たち

死を悼む動物たち死を悼む動物たち
(2014/08/19)
バーバラ・J. キング

商品詳細を見る

満足度★★★
付箋数:20

  「ギリシャ北西部のアンフラキコス湾、あたりの海には母親と
  その子どもの二頭のイルカしかいなかった。
  母親のイルカは子どもの小さな体を海面まで持ち上げると、
  ふたたび海のなかに押し戻していた。
  持ち上げては沈め、沈めては持ち上げる。
  母イルカは、こうやって死んだ子どもを生き返らせようと
  していたのだ。母親はそんな蘇生を繰り返していた。」

これは2007年に観察された、バンドウイルカの事例です。

母イルカは、子どものイルカが死んだことが受け入れられず、
時に声を張り上げ、何度も何度も亡きがらにくちばしと胸びれで
触り続けていたそうです。

この母イルカの嘆きの行動は、2日間に渡って続きました。

この母子がいた群れのイルカは、150頭程度いたそうですが、
ときどき近寄ってきて、様子をうかがっていましたが、
それ以上この母子に関わろうとはしなかったそうです。

死を悼むには、高度な知能が必要です。

人間でも死を理解するのは、4歳以降と言われています。

動物のなかでも人間だけが、死が避けられない事実であることを
知っていて、愛した人が亡くなったことを悲しみ、
喪失の思いを表すと考えられてきました。

果たして、人間だけが死を悼む特別な存在なのでしょうか?

人間以外の動物には、仲間や家族の死を悲しむ感情は
ないのでしょうか?

本書で、数多くの死を悼む動物の行動事例を報告するのは、
自然人類学を専門とするウイリアム・アンド・メアリー大学教授の
バーバラ・J・キングさん。

本書で紹介される動物の情動反応は、絵本のなかで見かける
ファンタジーではありません。

また、動物愛護のためのプロパガンダでもありません。

純粋に、研究事例として報告されています。

冒頭で紹介した子ども死を悲しむイルカの事例以外にも、
母親の死を追いかけるように衰弱したチンパンジーや、
仲間の遺骸のうえに子の木の葉や枝をかぶせるゾウもいます。

また、身近なところでは猫や犬の事例から、
馬、鳥、ウサギなどの愛着行動が数多く紹介されています。

しかしながら、動物が死を悲しみ、悼んでいる様子も、
彼らは私たちが理解できる言葉を持ちませんから、
あくまで人間のフィルターを通して見た姿になります。

ですから、動物の悲しみを推し量る手法が、現時点では
完璧ではないことを前提に、キングさんは次のように語っています。

  「悲しみに沈む姿が動物に認められたとき、わたしたちは、
  動物の愛情の有無をめぐる分岐点に立ち会っている可能性が
  あるということだ。その可能性は、ふたつの領域に重なる
  境界のようなものかもしれない。有名なだまし絵の前に
  立っていると想像してみてほしい。目をこらして見ていると、
  最初は明らかにウサギに見えていた絵が、見続けているうちに
  視覚に変化が生じ、ウサギからアヒルへとその姿を突然変えている。」

本書で報告される様々な事例を、読めば読むほど、
動物も死を悲しんでいるように思えます。

と同時に本書は、私たち人間の存在する意味を
改めて考えさせられる一冊でした。

この本から何を活かすか?

  「究極の犠牲―母グマ、無残な毎日から逃れるため
  わが子を殺して自殺」

これは2011年8月のデイリーポストのオンライン版に掲載された、
中国のクマ牧場での虐待記事の見出し。

本書では、次のように描写されています。

  「苦しさで鳴き声を上げる子グマをしり目に、胆汁採取の作業を
  進める作業員。愛するわが子が苦しむ様子に絶望する母親。
  拘束からなんとか自由になることができた。
  そして、子グマを抱きかかえて絞め殺す。
  そうすれば、これ以上子グマが苦しむ必要はなくなる。
  激しい感情の痛みに圧倒され、母親は意図して壁に向かって
  突進していった。自分も死ぬつもりだったのだ。」

Miss a meal if you have to, but don't miss a book.

このエントリーをはてなブックマークに追加

| 科学・生活 | 07:51 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

| PAGE-SELECT |