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日本の景気は賃金が決める

日本の景気は賃金が決める (講談社現代新書)日本の景気は賃金が決める (講談社現代新書)
(2013/04/18)
吉本 佳生

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満足度★★★★
付箋数:28

本書はアベノミクスに反対する本でも、賛成する本でもありません。

放たれた矢であるアベノミクスを、どのように修正すれば、
日本の景気が良くなるかを現実的に考えた本です。

吉本佳生さんは、アベノミクスの成否を分けるポイントは、
「誰にお金を回すか」にあると考えます。

モノやサービスの価格がじわじわと下る現象をデフレと呼びます。

普通に考えると、モノやサービスの価格が下がることは、
生活者にとって良いことのはずです。

しかし、問題なのは、モノやサービスを買うための
「賃金」が下がっていること。

より深刻な問題なのは、「賃金デフレ」です。

一般的に日本はアメリカなどから比べると、
賃金格差が少ないと考えられがちですが、
それは「男・大・正・長」の場合です。

これは「男性で、大企業に就職して、正規雇用のかたちで、
長年働いている人」を指します。

この「男・大・正・長」の条件の内、どれか一つでも外れると、
日本の賃金格差は主要先進国の中で最悪となるようです。

最も条件の良い「男・大・正・長」と対極にあるのが、
「女・小・非・短」。

吉本さんが日本の景気回復に必要と考えるのは、
「女性で、中小零細企業の社員で、非正規雇用で短い勤続年数の人」
の労働賃金を上げることです。

ハッキリ言うと、正社員の賃上げよりも派遣の時給アップが
必要ということですね。

そこで本書で提案されているのが、「おしくらまんじゅう政策」。

「女・小・非・短」の属性を持つ人が最も多く働く業種が
宿泊・飲食サービス業です。

マスコミで日本経済を論じる場合は、製造業を中心に
語ることが多いですが、そもそも第二次産業は
日本の産業別GDPの24%しか占めません。

GDPの75%を占めるのが、第三次産業であるサービス業。

そのサービス業で求人が多くなり賃金上昇につながるのが、
「稼働率」が上がることです。

稼働率を高くするには、人が集まることが必須です。

広範囲に住んでいた人が、都市部に集まって、
都市部の人口密度が高くなれば、宿泊・飲食サービス業での
求人が増え、「女・小・非・短」の人たちの賃金につながります。

そのために都市機能をもっと高度化して、都市部の不動産価格が、
安定的に上昇し、多くの人もそれを期待することが重要です。

つまり、「おしくらまんじゅう政策」とは、
金融緩和が引き起こすであろう不動産価格の上昇を利用して、
人口を都市に集めて、サービス業の需要を増やす政策。

それは、人が集まることで、集まった人たちの体温で
暖まろうとする、おしくらまんじゅうに似ていることから、
吉本さんは、このように命名しています。

物価上昇が必要とするアベノミクスの三本の矢を、
賃金格差縮小のため次のように修正するのが本書の提案です。

  1. 金融緩和 : 金融緩和を不動産価格上昇につなげる
  2. 公共事業拡大 : 公共事業は都市部で交通網整備などに使う
  3. 成長戦略 : 人口の都市部への集積でサービス業は成長

本書は、リフレ派と反リフレ派の批判合戦に組みせず、
アベノミクスを成功に導くにはどうするかという点に
照準を合わせているところがイイですね。

この本から何を活かすか?

本書で吉本さんが解説に使う図表は全部で68枚。

これらのほとんどは、吉本さんが持論の正しさを裏付けるために
作成したものではなく、政府発行の白書に掲載されているものです。

公開されているデータでも、それをどう読み取るかは、
その人次第ということがよくわかりました。

Miss a meal if you have to, but don't miss a book.

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| 経済・行動経済学 | 07:25 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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