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「世界金融危機」のカラクリ

「世界金融危機」のカラクリ (PHPビジネス新書)「世界金融危機」のカラクリ (PHPビジネス新書)
(2012/11/17)
吉本 佳生

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満足度★★★★
付箋数:25

経済学者の吉本佳生さんは、本書で「ギリシャ危機」の
本当の理由を指摘します。

  「なによりも、ドイツとギリシャのあいだで、
  “為替レート” が大幅に変動してしまった結果だ。」

ちょっと、待ってください。
ドイツもギリシャも同じユーロという通貨を使っているはず。

それなのに、なぜ、この2国間で
“為替レート” が存在するのでしょうか?

そもそも為替レートの変動リスクをなくすことが、
統一通貨ユーロを使う一つの目的です。

  「ところが、表面的な為替レート変動は起きなくても、
  “実質的な為替レート変動” は起きているのです。
  結論からいえば、ドイツは同じユーロ圏内の国々に対して、
  実質的な為替レートを安くできたからこそ、経常収支黒字の拡大を
  エンジンに失業率を下げることができたといえます。」

吉本さんが言っているのは、「名目実効為替レート」と
「実質実効為替レート」の話しです。

名目実効為替レートとは、ニュースなどで毎日耳にする、
いわゆる普通の為替レート。

一方、実質実効為替レートとは、名目実効為替レートに
物価調整を加えたもの。

例えば、1ドル=100円の名目為替レートだった日米間で、
その後、米国はインフレが進み、日本はデフレが進んだ場合。

インフレとは物価が上がり、逆にお金の価値が下がること。
デフレは物価が下がるので、お金の価値が上がること。

従って、物価調整した実質実効為替レートで考えると、
以前と同じ比率で交換するためには、価値の下がった米ドルは
もっとたくさん必要で、価値の上がった円は少しで済むわけです。

だから、1ドル=80円でも、まだ以前より円安という
話が出てくるわけです。

ドイツとギリシャの話に戻ると、この2ヶ国は同じユーロを使っていても、
物価上昇率に大きな差が生じたため、実質実効為替レートでは、
ドイツは通貨安、ギリシャは通貨高になっているのです。

通常、実質実効為替レートの話は、円高かどうかの議論で
よく出てきますが、それをユーロ圏内に当てはめて、
ギリシャ危機の解説で用いているのが、吉本さんのウマイところ。

本書で吉本さんは、世界金融危機を読み解くために、
いつも複数のデータから、2つ以上の視点をもって考える
「複眼思考」のパターンをいくつも提示します。

そして、米国経済、欧州経済、日本経済と
順に解説することで、国際金融の仕組みを明らかにします。

いつもながらの、吉本さんの鋭い指摘やツッコミが満載。

国際金融のすべてを解説する教科書的な本ではありませんが、
本書を読むことで、複眼思考を持つと見えてくる
新しい世界を体験することができます。

この本から何を活かすか?

  「まとめると、国際金融に限らず、より一般的な
  “金融” や “マクロ経済” の内容を理解したければ、
  その前提として2つの点がとても大切になります。
  ひとつは、ここで述べたように複式簿記の考え方を身につけること。
  もうひとつは、統計データの読み方を身につけることです。」

これは吉本さんが、「あとがき」に書いている言葉。

会計の基礎を理解するための本としては、
昨年読んだ中では後正武さんの
伝説のコンサルタントが教える あまりにやさしい会計の本
が分かりやすかったように記憶しています。

また、統計データの読み方を身につけるには、
少し前の本ですが、神永正博さんの『ウソを見破る統計学』が
良かったですね。

そして、少し統計の知識が身についた方に、
是非オススメしたいのが、吉本さんの
確率・統計でわかる「金融リスク』のからくり』です。

Miss a meal if you have to, but don't miss a book.


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| 経済・行動経済学 | 11:57 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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