グラフで見ると全部わかる日本国の深層
![]() | グラフで見ると全部わかる日本国の深層 (2012/07/06) 高橋 洋一 商品詳細を見る |
付箋数:20
日本のデフレの原因は、「人口減少」にあるのでしょうか?
これは、藻谷浩介さん著の「デフレの正体」の中で
述べられていた主張です。
日本最大の問題は、二千年に一度の人口の波であり、
現役世代の人口減少こそがデフレの原因であると。
同じ主張は、日銀の白川総裁からも述べられています。
白川総裁は、2010年11月4日に都内で行った講演で、
日本は人口が減少し、経済成長率が低下していると指摘し、
デフレの根本原因は、人口減少や潜在成長率の低下にあると
強く訴えていました。
この主張が本当に正しければ、
人口増加率とインフレ率に相関があるはずです。
本書の著者、高橋洋一さんは、この説を検証するために、
世界各国の2000年~2008年の人口増加率とインフレ率の
関係をグラフにプロットしました。
その結果は、見事に相関なし。
日本より、人口増加率が低い国は、東欧など10カ国以上
ありましたが、その中で日本のインフレ率は最低で、
日本以外でデフレに陥っている国はありませんでした。
また、白川総裁がもう一つデフレの原因として挙げていた、
潜在成長率についても同様に、
グラフを書くと相関がないことがわかります。
では、いったい何がデフレの原因なのか?
高橋さんが、この問題を考えることきの拠り所とするのが、
「ワルラスの法則」です。
これは貨幣数量理論として知られ、マネーを市場に出すと、
通貨発行益(シニョレッジ)が政府・中央銀行に発生して、
それが物価を上げ下げするという原理です。
高橋さんは、この理論を検証するために、2000年から2008年までの
各国の通貨増加量とインフレ率の関係をグラフにプロット。
グラフは見事に正の相関があり、
世界で唯一、通貨増加率がマイナスの日本だけが
デフレになっている状況が見て取れました。
つまり、デフレの原因は、「通貨の少なさ」にあると。
相関=原因ではありませが、少なくとも相関がなければ、
仮説にさえすることができませんね。
「本書では、このような、世間に流れる25のウソを、
44のグラフを利用することによって、そのメッキをはがし、
真実に迫っていく。(中略)
だから読者の方々は、この本を読んだあと、様々な報道に接しても、
そのどこに真実が隠されているのか鼻が利くようになるはずだ。
政治家、官僚、日銀、そしてマスコミに、
私たちはもう騙されてはならない。」
本書で、高橋さんが示すグラフはいずれも、
喧伝されるウソを覆す明快なものばかり。
さすが、東大理学部数学科出身で、財務省時代に「異端児」と
呼ばれた高橋さんだけのことはあります。
ただし、本書では、どのようにしたら高橋さんのように、
論理的に考え、それを立証するグラフを書くことができるのか、
そのHowToまでは示されていません。
そこは、読者自身が解くべき課題なのでしょう。

「デフレ下の消費税議論はクレイジー」
これはMIT名誉教授、レスター・サローさんの言葉。
では、議論どころか、デフレ下で消費税増税を決めてしまった国は、
一体何と表現したら良いのでしょうか?
「民主党政権は、正常な経済運営を間違いだといい、
増税だけで財政再建をしようとしたが、
これは正気の沙汰ではない。」
「クレイジー」と「正気の沙汰ではない」では、
どちらが上かはわかりませんが、狂っていることだけは確かです。
Miss a meal if you have to, but don't miss a book.
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