生命保険のカラクリ

生命保険のカラクリ (文春新書)
(2009/10/17)
岩瀬 大輔 商品詳細を見る
満足度★★★★
確実にお金を儲ける方法があります。
それは、ギャンブルの胴元になること。
胴元がどれだけ儲けるかは、控除率で決まります。
はじめから決まっている、賭ける人に分配しない割合。
いわゆる「テラ銭」です。
要するに、テラ銭の割合が高いほど、胴元は儲かります。
一般的にテラ銭は、パチンコで1割強、競輪・競馬は2割5分、
宝くじは5割というのが、よく知られたところ。
つまり、宝くじの胴元になるのが一番儲かる。
1枚300円で売って、その内、150円だけを払い戻すように
商品設計されていますから、これ程リスクを取らずに
儲けられる商売は他にありません。
しかし、残念ながら宝くじを勝手に作って販売することは
法律で禁止されています。
それでは、どうするか?
法律で禁止されていない宝くじを販売すればよい。
それが宝くじ同様に、控除率が5割に達する「生命保険」です。
橘玲さんの言葉を借りると、
「生命保険は損することに意味のある宝くじ」。
そして、生命保険会社を自分の会社の中核事業としているのが、
世界一のお金持ち、ウォーレン・バフェットさんです。
さて、前置きがかなり長くなりましたが、
本書は、生命保険と生命保険事業の実態を
わかりやすく説明する「生命保険の入門書」。
著者は、 出口治明さんと共にネット生保、
ライフネット生命保険を2008年に立ち上げた岩瀬大輔さん。
岩瀬さんが、生命保険会社を作ることを米国の友人に話すと、
「日本のバフェットを目指すんだね!」と言われたそうです。
ライフネットは、業界でタブーだった手数料(付加保険料)を開示し、
「どこよりも正直な経営を行い、どこよりもわかりやすく、
シンプルで便利で安い商品・サービスの提供を追求する」
という経営理念が共感を呼び、加入者が順調に増加しているようですね。
本書で説明される内容は、岩瀬さんとて、
生保会社を経営する身ですから、
ポジショントークがゼロではありません。
しかし、一般消費者に正しい生命保険についての考え方や、
選び方を伝えたいという、岩瀬さんの想いが伝わる良書になっています。
独立系ファイナンシャルプランナーの方が書く
生命保険の評論本とは一線を画します。
これは、志を持って、生命保険業界の古い慣習と戦いながら
ネット生保を設立した、岩瀬さんだからこそ書ける内容です。

証券業界は、多くのネット証券が参入したことにより、
手数料が引き下げられ、あたらに投資を始める人が増え、
市場が活性化されました。
現在は、大手証券会社とネット証券会社の棲み分けが進んでいます。
生保業界の今後はどうでしょうか?
証券業界と異なり、既に生命保険の世帯加入率は9割。
ですから、新たな加入者を引き込むのではなく、
ネット生保の参入で起こるのは、加入者のシフトでしょう。
今後は大手生保のシェアが徐々に低下し、
大手・共済・ネット生保の加入者数が拮抗するのも
そう遠いことではないかもしれません。
Miss a meal if you have to, but don't miss a book.
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| マネー一般 | 06:29 | comments:2 | trackbacks:2 | TOP↑
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