活かす読書

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人でなしの経済理論

人でなしの経済理論-トレードオフの経済学
人でなしの経済理論-トレードオフの経済学
(2009/04/03)
ハロルド・ウィンター 商品詳細を見る

満足度★★★★

著者のハロルド・ウィンターさんはオハイオ大学の経済学教授。

あるとき、ウィンターさんの母親が、
大学の講義でウィンターさんが、どんなことを教えているかを
尋ねたそうです。

社会政策について経済的な側面から熱く語るウィンターさん。

それを聞いて母親はおびえたような目つきでひと言。

  「あんたは鬼だわ!」

こんなエピソードを持つウィンターさんが
本書で解説するのは「トレードオフ」の考え方。

一方を採用すると、他方は採用できない二律背反の経済的関係。
これを費用と便益、つまり最小の費用で最大の経済的効果を
得ることだけに着目して議論を進めます。

取り上げられるテーマは、人命の価値、臓器売買、
著作権問題、医薬品と特許、喫煙、製品の安全性など。

着目点は、正しいか、間違っているかではなく、どちらが得か。

一般的には道徳的な判断や心情的な配慮がなされる問題を、
本書ではあえて経済的、論理的に割り切って議論しているので、
大胆な仮説や極論を用い、トレードオフの本質を見極めます。

世間一般で「悪」とされる行為についても、
頭ごなしに、「悪=無価値」そ判断せず、
一端はその行為の便益や、良い点などを考えるわけです。

現実の世界では、公正であるべき裁判でさえ、
客観的な判断だけでなく、主観的な判断が入り込みます。

更に、私たちが日々直面する問題においても、
矛盾点をトレードオフするのではなく、
アンビバレントに解決する場面も多いことでしょう。

しかしながら、最終的に道徳的判断が下されるにせよ、
本書で解説されるように、費用便益分析を行い、
その結果を判断材料のひとつに加えることも重要なはずです。

「人でなし」とタイトルについているだけのことはあり、
取り上げられる事例で、ウィンターさんの悪趣味が
顔を覗かせる部分もあるので、すべての人にオススメできる本では
ありませんが、私は十分に楽しむことができました。

次作の「The Economics of Crime」(日本語訳版は未刊行)では
犯罪の便益が論じられているようで、こちらの出版も楽しみです。

この本から何を活かすか?

本書は、「その数学が戦略を決める」などを訳していた
山形浩生さんの翻訳です。

本文の訳もさることながら、山形さんの「訳者あとがき」も
ピリリと辛さが効いていて最高。

まるでピザに欠かせないタバスコのように良いテイストを加えています。

で、山形さん自身に興味をもったので、
YAMAGATA Hiroo Official Japanese Page」を拝見しました。

かなり個性の強い方のようですね。
今後、山形さんの訳書にがぜん注目です。

Miss a meal if you have to, but don't miss a book.

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| 経済・行動経済学 | 09:48 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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