ペンギンもクジラも秒速2メートルで泳ぐ
ペンギンもクジラも秒速2メートルで泳ぐ―ハイテク海洋動物学への招待 (光文社新書 (315))
(2007/08)
佐藤 克文商品詳細を見る
満足度★★★★★
ウミガメ(爬虫類)は定温動物、ペンギン(鳥類)は変温動物。
これを読んで、「おい、間違ってるぞ!」と思った、あなたは優秀です。
中学校の理科の授業で習ったことを、ちゃんと覚えている方ですね。
この本には、誰もが知っている教科書の内容を覆すような
実験結果が、記されています。
水中で暮らす動物の生態については、意外なほど、
未知の現象があるようです。
だからと言って、本書は、いろいろな生物学の疑問に、
網羅的に答えるQ&Aの本ではありません。
あくまでも、著者である佐藤克文さんの研究対象となる、
ペンギン、アザラシ、ウミガメなどの生態観測から分かった、
興味深い事実を紹介する本です。
ですから、この本を読んだからといって、明日からのあなたの生活に、
大きな変化をもたらすことはありません。
実用性の面で考えても、男性の読者に限定で、
強風下での“立ち小便の仕方”が参考になる程度でしょう。
しかし本書は、海洋動物の生態に全く興味のない人にも、
読む価値が十分にあります。
まず、なんといっても、おもしろい。
私が、ここまで笑った本は、藤巻健史さんの「外資の常識」
以来、記憶にありません。
そして、新しい発見をするときのワクワク感や、実験でのドタバタ感が、
非常によく伝わってくる「おもしろ実験記」に仕上がっています。
たくさんの本を読んでいると、思いがけず、
素晴らしい本と出合うことがありますが、この本がまさにそうでした。
まさに“多読冥利”に尽きます。
佐藤さんは極地を飛び回る現役の研究者なので、
すぐに次回作を期待するのは、むずかしい面がありますが、
次に一般向けの本が出版されれば、私は、すかさず読むことでしょう。 この本から何を活かすか?
「求む男女。ケータイ圏外。わずかな報酬。極貧。
失敗の日々。絶えざるプレッシャー。就職の保証なし。
ただし、成功の暁には、知的興奮を得る。」
これは、探検家のシャックルトンさんが、同行メンバーを募る際に、
イギリスの新聞に掲載した名文もとに、佐藤さんが作ったものです。
佐藤さんには、「日本にも、こんなにおもしろい職業がある」
と いうことを、青少年世代に伝えたいという想いがあります。
私は、残念なことに、高校生の親類や知人はいませんが、
今後、どこかで高校生に接する機会があれば、
有無を言わず、この本をプレゼントしようと思います。
May the reading be with you!
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