活かす読書

読んだ本を、どう活かすか? セミリタイヤしたikadokuが、週に5冊、ビジネス書・自己啓発本・投資本・ベストセラーなどの本を紹介します。


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日本買い 外資系M&Aの真実

満足度★★★
付箋数:22

株式会社オトバンクの上田さんから
献本いただきました。ありがとうございます。

台湾の鴻海精密工業(ホンハイ)による
シャープの買収が2016年8月12日に完了しました。

今後、シャープの技術力や優秀な若手人材が
ホンハイの資金力、世界レベルでの販売力、
効率的な生産能力を得て、再び輝きを取り戻す
ことが期待されています。

しかし、こうした外資による対日投資は、
実は、まだまだ少ないのが現状です。

対日直接投資残高は約18兆円で、対GDP比3.8%。

これは、世界199ヶ国中196位で、日本の
対外直接投資残高の6分の1にも達していません。

本来は外資にとって、日本企業は魅力的です。

 ・先進的で洗練された製品、サービス
 ・非効率な資産、資金運営
 ・豊富な買収融資(日本の銀行)
 ・優秀で忠誠心の高いスペシャリスト、スタッフ

要は、外資にとって日本企業は「のびしろ」が
あって、買う理由が多く存在するのです。

では、なぜ、外資による対日投資は進まないのか?

端的にいうと、日本企業の多くが、
外国企業によるM&Aを避けているからです。

日本企業は、買収を好み、売却を嫌います。
そして、国内企業同士のM&Aを好みます。

それは2000年前後についた「外資=ハゲタカ」と
いうイメージも大きく影響していることでしょう。

真山仁さんの経済小説『ハゲタカ』が、
テレビドラマ化や映画化されたことで、
一層、こうしたイメージに拍車がかかった
のかもしれません。

しかし、外資による対日投資は、資本だけでなく、
人材、知識、海外市場へのアクセス等を
受け入れるチャンスなのです。

株は外資に行きますが、資金と人材を開放し、
日本側は技術、市場、規模を手に入れることが
できるのです。

また、企業価値創造の手法としてM&Aを
考えるとき、国内だけしか視野に入れないのは、
価値創造の最大化に適しているとは言えません。

本書は、今まであまり取り上げられなかった、
外国企業による日本企業の買収をテーマに
した本です。

著者は、名門外資系ファンドの
元日本代表の加藤有治さん。

加藤さんがこれまで直接関わった、
対日直接総投資額は、3300億円という、
その道のプロフェッショナルです。

本書では、外資系M&Aの駆け引きと
価値創出の実態が明かされます。

読者として想定されているのは、対日M&Aを
活用して経営資源を取り込みたいと考える
経営者のみならず、望まない外国企業からの
買収を避けたい経営者も対象です。

また、外国企業にサービスを売り込みたい
銀行員やプロフェッショナル。

外国企業の傘下に入った日本企業で
生き残りたいビジネスパーソン。

外国企業に就職し、世界を舞台に活躍したい
学生なども読者として想定されています。

 ・「対日M&A」とは、誰が何を買うことなのか?
 ・「対日M&A」は、実際にはどう行われるのか?
 ・外国企業は、誰と協力し、誰と争いつつ、
  買収や経営を実行しているのか?
 ・「対日M&A」は具体的には、どう行われて
  きたのか? 成果は上がっているのか?
 ・「対日M&A」はデメリットの方が
  大きいのではないか?
 ・「対日M&A」が外国企業にはいいのはわかるが、
  日本側には受け入れていいことはあるのか?
 ・「対日M&A」が増える時代に、個人として
  どう備えたらいいのか?

本書では、こうした「対日M&A」に関する疑問に
丁寧に答え、外資の「日本買い」が、
日本に希望を与えるものであることを解説します。

巻末には、「外国企業で活躍したいあなたへ」と
題したコラムも掲載されています。

履歴書の書き方から、インタビューの対応方法、
入社後の注意点もアドバイスされています。

この本から何を活かすか?

「M&Aは売り手が優位である」といわれる理由

本書では、コラムの中で、この2つの理由が
解説されていました。

1つ目は、M&Aは常に売り手市場であること。

これはM&Aの対象会社が1社であるのに対し、
買い手が複数社いるのが一般的だからです。

2つ目は、相乗効果の実現形態が売り手と
買い手で異なることです。

売り手は売却時点で、株式を現金に換え、
価値を顕在化できます。

一方、買い手側は、相乗効果を未実現の
「収益期待」でしか受け取れないため、
買い手より売り手の方が優位なのです。

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| 会計・ファイナンス・企業分析 | 05:58 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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ファイナンスの哲学

満足度★★★★
付箋数:23

  「一般のビジネスの世界では、 “人間力” とか
   “リーダーシップ” が盛んに語られるように
  なったが、ファイナンスの世界ではこういった
  話が一切聞かれないのはなぜか。
  ファイナンスの世界に人間力は不要なのか。
  金融は “読み書き算盤” の “算盤” の
  部分だから、人間の中身とは関係がないのか。
  答えは否である。」

本書は、ファイナンスの基礎にある人間や
資本主義社会に関する本質的な理解を
深めるための「哲学的思索」を行う本です。

無機質、無味乾燥になりがちなファイナンスに、
血を通わせることで、人とのつながりを
取り戻す本とも言えます。

著者は、日本興業銀行、ゴールドマン・サックス、
森ビル・インベストメントマネジメント社長を経て、
2015年まで森ビルの取締役専務執行役員CFO
を務めていた堀内勉さん。

本書の第1章では、これだけ押さえておけば、
ファイナンス理論を概ねカバーできる、
3つの枠組み「財務諸表の理解」、「資金調達の
種類と方法」、「投資と企業価値」について
解説します。

正直、この章に関しては、他のファイナンス本でも
説明されている基本的な内容です。

しかし、続く第2章、本書のメインディッシュに
進むために、知っておくべき前提条件として、
説明されています。

そして、本書の約6割のページが割かれているのが、
第2章の「本質的な理解のための10大概念」です。

ここではファイナンス技術の根底にある、
重要な基本概念について、ファイナンスとの
つながりを意識しながら解説されています。

  「ファイナンスはどのように人間とつながるのか?
  本章では、これまで出てきたファイナンス理論の
  元になっている基本的な概念とは何なのか、
  そしてそれが経済思想や我々人間存在とどのように
  つながっているのかを探ってみたい。」

この章で語られるのは、以下の10大概念です。

  「おカネ(money)」、「信用(credit)」、
  「倫理(ethics)/信頼(trust)」、
  「利子(interest)」、「利益(profit)」、
  「価値(value)」、「市場(market)」、
  「成長(growth)/進歩(progress)」、
  「時間(time)」、
  「資本(capital)/資本主義(capitalism)」

・おカネの本質とは何か?
・ファイナンスにおける利子とは?
・「利益」とは本来何だったのか?
・なぜ成長が求められるのか?
・資本主義とは何か?

10大概念の説明では、こういった問いが立てられ、
それに答えるように、経済学の哲学、経済思想が
語られています。

  「おカネがなぜ流通するのか、おカネの本質とは
  何なのかについては、歴史的にさまざまな説が
  唱えられてきた。ニクソンショックによって
  金本位制が廃止されて以降のおカネは、
  それ自体の価値から人々の共同幻想や国家の
  信用に支えられてきたものに転換したのは
  間違いない。
  日本人はとかくおカネは忌むべきものと捉えがち
  だが、元来、土地や地域社会に縛りつけられてきた
  人間が、おカネによって移動の自由や職業選択の
  自由を得たというプラスの側面も忘れてはならない。
  他方、おカネが市場経済と結びついたとき、
  資本主義という怪物が出現し、ここから爆発的な
  経済成長と人間疎外が始まった。」

本書は、実務面で役立つ本ではなく、
あくまで本質的な理解に役立つ教養講座的な
内容の本です。

私は、いままで、このような本を読んだことが
なかったので、非常に新鮮でした。

この本から何を活かすか?

  「テレビドラマ『ハゲタカ』の中で、
   “人生の悲劇は2つしかない。
  1つは、金のない悲劇。
  もう1つは、金のある悲劇。” という言葉が
  出てくる。おカネから主導権を取り戻し、
  おカネに使われることなく、おカネをうまく使う
  人生を取り戻すことができるか、そこに我々の
  未来がかかっている。」

本書で引用されている『ハゲタカ』は、
2007年にNHKで放送された経済ドラマです。

このドラマ、NHKオンデマンドで視聴可能なので、
見てみようと思います。
(全5話、単品216円、特選見放題パック972円)

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| 会計・ファイナンス・企業分析 | 08:01 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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あれか、これか

満足度★★★★
付箋数:28

ダイヤモンド社の藤田さんから献本いただきましたが、
この本を書店で見つけ、少しでもページを開いたなら、
私は間違いなく買っていたと思います。

ありがとうございます。

  「僕たちの人生は、選択の連続だ。
   “選ぶことが人生だ” と言ってもいい。(中略)
  選択とは価値判断だ。僕たちはいつも
   “最も価値がある≒最も得をする” と思ったものを
  選んでいるはずだ(少なくとも理論的には…)。
  今日のあなたは、昨日までのあなたが下した
  価値判断の結果にほかならない。
  だとすれば、悔いのない人生を送るために、
  僕たちにできることはたった1つ ― 。
   “値打ち” を正しく見抜くことだ。
  本書で僕がお伝えしたいのは、本当の価値を見抜き、
  正しい選択をするために人類が生み出した
  究極の実学・ファイナンス理論の考え方である。」

本書は、あまり専門的になり過ぎずに、
人生の役立つ部分を題材として扱った
ファイナンスの入門書です。

著者は企業価値評価のスペシャリストの
野口真人さん。

これまで2500件以上の企業評価を行い、
グロービス経営大学院で10年以上にわたり
ファイナンス基礎講座を教えている方です。

本書ではクイズ形式で問題を出題しながら、
最強の実践的学問であるファイナンスを学びます。

では、本書の中から1問。

あなたは亡き父の財産を相続することになりました。

相続人はあなたと妹の2人だけで、
相続財産は預金2000万円と2つの不動産。

1つは築20年の中古マンションで、
もう1つは新築のマンションです。

どちらも1室のみの所有で、中古、新築とも
月25万円の家賃収入があります。

ここで妹が次のような提案をしてきました。

  「実はちょっとお金に困ってて・・・。
  不動産については中古マンションのほうで
  いいから、現金2000万円は全額、
  アタシに相続させてくれない?」

あなたが、そんな不公平なことがあるかと、
口を開きかけたところ、こんな話をしてきました。

  「考えてもみてよ。たしかにどちらも月25万円の
  家賃だから、年間のキャッシュフローは
  300万円(=25万円×12ヶ月)よ。
  でも、新築のマンションの耐用年数は50年以上と
  言われているから、中古のマンションより
  20年は多く稼げるでしょ? ってことは、
  新しいマンションのほうが6000万円
  (=300万円×20年)は価値が高いってこと。
  アタシだって本当は新築マンションのほうがいいわ。
  でも、とにかくいまはお金が必要なの。
  だから、中古マンションで我慢する分、
  2000万円はアタシに相続させてよ」

シンプルにするために相続税は考慮しません。

さて、兄妹の情は別にして、損得で考えた場合、
あなたは妹の申し出に乗るべきでしょうか?

実は、この妹が使った理屈は、
ファイナンス初心者をダマす典型的な手口です。

あなたは、妹のペテンを見破れますか?

ここで一番大切なのは、将来の300万円と
現在の300万円は価値が違うということです。

例えば、預金金利は6%だった場合、
複利計算をすると現在の300万円は10年後、
537万円(=300万×1.06の10乗)になります。

逆に考えると、10年後の300万円は、
現在ではもっと低い価値のはずです。

300万÷1.06の10乗で計算してみると、
現在の168万円が10年後の300万円と
同じ価値ということになります。

このように将来受け取る予定のお金は、
現在ではどの程度の価値を持つかを割り引いて
(割引現在価値)比べなければなりません。

つまり、妹の話には、10年後でも50年後でも
年間の家賃収入300万円を現在の300万円として
計算しているところにペテンがあるのです。

本当は、将来のキャッシュフローを現在価値に
引き直してから全て足さなければ、
比べることができないのです(DCF法)。

ちなみに金利6%でDCF法を使って正味現在価値を
計算すると、新築マンションは4729万円、
中古マンションは4129万円となり、
その差はわずか600万円程度に過ぎません。

この本から何を活かすか?

「オプション取引」とは、あらかじめ決められた
期間や期限に、ある資産を一定の価格で取引する
「権利」の取引です。

こう説明されると難しく聞こえますが、
実は世の中は「オプション取引」に満ちています。

これも本書からの問題です。

次のうち、オプション取引でないものは
いくつありますか?

 1. 超人気のレストランのフルコースを
  1年後の記念日に予約した
 2. 1等3億円の当たる年末ジャンボ宝くじを購入
 3. 家族の将来に備え、生命保険に加入した
 4. 1ヶ月後に仕立て上がるスーツを代金後払いで
  注文した

本書は買って損のない本ですから、
是非、正解は、本書を手にとってお確かめください。

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| 会計・ファイナンス・企業分析 | 12:51 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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儲けの極意はすべて「質屋」に詰まっている

満足度★★★★
付箋数:24

アジア・ひと・しくみ研究所の新井さんから献本いただきました。
ありがとうございます。

  「一般のビジネスパーソンが知りたい “数字の知識” は、
  いわゆる “会計数字の知識” とはズレている」

本書は、簿記や会計に関する深い知識(=会計数字)を
学ぶ本ではなく、ビジネスの「儲けの仕組み」をストーリーで学ぶ本。

著者は、アジア・ひと・しくみ研究所代表の新井健一さんです。

「儲けの仕組み」を理解するには、景気に左右されず、
不況でも儲けを出し続けているビジネスから学ぶ必要があります。

では、どんなビジネスが潰れずに、儲かり続けているのか?

タイトルの通り、本書では「質屋」から儲けの仕組みを学びます。

最近は、看板を見かけることも少なくなり、やっているのか
やっていないのかわからない質屋も多くなっています。

どちらかと言うと、細々とやっているという印象でしょうか。

果たして、本当に質屋は儲かるのか?
そして、そこから学ぶべき儲けの仕組みがあるのか?

本書で解説される質屋ビジネスとは、形を変えて進化した、
「もとをたどれば質屋」のビジネスも含みます。

  「本書では主に、そのルーツを鎌倉時代にまでさかのぼる “質屋” 、
  また質屋を母体として繁盛しているディスカウントショップ、
  リサイクルショップなどを取り扱います。
  営々と続いてきた質屋ビジネスは、景気のいかんにかかわらず、
  商売で儲け続けるためのエッセンスが凝縮されています。」

質屋は、700年潰れることなく続く「最強のビジネスモデル」。

ちなみに、質屋ビジネスは、銀行などの金融機関のように、
「お金を貸してその利息を得る儲けの仕組み」と、
質草として「預かった商品を売るという小売業のような
儲けの仕組み」を合わせて持つ商売です。

本書では、儲けの仕組みを2人の男性を主人公とする
ストーリーから学びます。

主人公は、年収1000万円のコンサルタントだった徳川さんと、
年収500万円のエンジニアだった中山さん。

いずれも33歳の独身男性です。

2人はそれまで勤めていた会社を辞めることになり、
その直後に、たまたま居酒屋で出会い意気投合しました。

最初は、それぞれがビジネスを始めようとしていましたが、
うまくいかず、偶然、居酒屋に居合わせた質屋のオーナーに
誘われて、質屋で商売の勉強をすることになります。

特にコンサルタントで高年収だった徳川さんは、
「質屋? いまどきそんな商売は儲からないぜ」と
難色を示していましたが、乗り気な中山さんに押され
一緒に付き合うことになりました。

実際に質屋で働いてみても、ほとんどお客は来ません。

しかし、それでも潰れずに確実に儲けを出している、
質屋ビジネスの秘密=儲けの仕組みを、
2人はオーナーからレクチャーを受けながら、
徐々に知ることになります。

性格も考え方も違う徳川さんと中山さんのコンビは、
掛け合いも面白く、飽きずにストーリーを読むことができます。

また、ストーリー以外の解説も図が多いので、
非常に理解しやすくなっています。

本書は、経営に必要な「儲けるための数字の見方」を
学べる本だと思います。

この本から何を活かすか?

本書では最後に、商売の大原則として、
質屋ビジネスの5つのポイントがまとめられています。

  1. 質屋は2つの儲けの仕組みからなる
  2. 質屋には債権の回収リスクが小さい
  3. 質屋は口コミを起こしやすい商売
  4. 質屋は莫大な更新投資が必要ない
  5. 質屋は店を続ければ続けるほど儲かる

山田真哉さんの『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?
ではありませんが、あまり目立たない商売だったので、
質屋の儲けの仕組みは意外でした。

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| 会計・ファイナンス・企業分析 | 08:22 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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良い値決め 悪い値決め

満足度★★★★
付箋数:25

もし、あなたの仕事が「DOG」なら、あなたが得られる報酬は、
「無料」に向かうことでしょう。

つまり、働いても、働いても、利益にならないということです。

かつてボストン・コンサルティング・グループが提唱した
プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)では、
事業を「金のなる木(cash cow)」、「花形商品(star)」、
「問題児(problem child)」、「負け犬(dog)」の4つに
分類しました。

PPMでの「dog」は撤退を検討すべき領域の事業でした。

これに対し、本書で田中靖浩さんが提唱するのは、
デジタル時代の「新しい負け犬(DOG)」です。

新「DOG」は、今までの負け犬よりも、
急激なスピードで、無慈悲な価格の下落に向かいます。

本書で説明される「DOG」は次の頭文字です。

  D : デジタル
  O : オンライン
  G : グローバル

デジタルの世界では、マネやパクリ、コピーが横行します。
オンラインの世界では、無料を相手に戦わなければなりません。
グローバルの世界では、仕事がコストの安い国に奪われます。

本書では、実際にDOG環境で消耗している企業として、
日本最大規模の量販店、ヤマダ電機の事例を取り上げています。

ヤマダ電機の2013年の売上高は約9000億円で、
前年より約1000億円も増収しました。

しかし、営業利益は前年の約200億円から、赤字に転落。
いわゆる「増収減益」というやつですね。

ヤマダ電機はそれまで、大量仕入れのスケールメリットを生かし、
リーマンショックの時でさえ黒字計上してきましたが、
ネット通販に対抗する「値下げ」のマイナスパワーによって、
利益が消し飛んでしまい、赤字に転落したのです。

DOG環境では、スケールメリットが効かなくなってしまいました。

ショールーミング現象で激安ネットショップと戦っていては、
利益が出なくなるのは当然かもしれません。

田中さんが本書で提案するのは、DOGと戦わない道です。

戦うべきか、戦わざるべきか、そのカギを握るのが
「値決め」なのです。

本書では、次の3つのステップで、DOGと戦わない道を歩みます。

  1. 値下げのメンタルブロックを外す
  2. 値下げの下限を知るため、値決めの数字を学ぶ
  3. 値決めを成功させるマーケティング&心理学を学ぶ

目指すのは、DOGと反対の「CAT」のいる世界です。

「CAT」とは、Cozy(居心地がよく)で、Analog(人間的な魅力)の
Touch(共感と触れあい)な世界です。

ブルーオーシャン戦略になぞらえて、値下げ競争が必至な
「レッドドック」から、良いものを気持ちよく高く売る
「ブルーキャット」へ転換するとも表現されています。

本書は、前半で利益を重視した適切なプライシングを解説し、
後半では値決めを軸とした、マーケティングや行動経済学に
ついて説明されています。

公認会計士の方が書いた本なので、最初はもっと会計色の強い
本なのかと思いましたが、意外と読みやすい本でした。

きっと、本書自体もDOGで戦うことを避け、
CATを考えて執筆されたのでしょう。

この本から何を活かすか?

  「良い値決めとは、 “価格の哲学” を心に持って行う値決めです。
  悪い値決めとは、 “価格の哲学” なく流されて行う値決めです。」

これが、本書のタイトルに込められた、田中さんのメッセージです。

  「 “良いものを、より安く” ―こんなバカげた話はありません。
  おかしいです。どっからどう考えても間違いです。
  悪いものは安いし、良いものは高い。
  これが商売の道理というもの。」

本書は、「値決め」についての田中さんの魂が感じられました。

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| 会計・ファイナンス・企業分析 | 08:24 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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