活かす読書

読んだ本を、どう活かすか? セミリタイヤしたikadokuが、週に5冊、ビジネス書・自己啓発本・投資本・ベストセラーなどの本を紹介します。


| PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

日本史で学ぶ経済学

満足度★★★★
付箋数:24

ここ数年、ビットコインなどの暗号通貨が
大きな話題になっています。

暗号通貨は、不正を防止するために、
高度な暗号技術が用いられた仮想通貨。

そこには、貨幣の未来の姿があります。

では、その貨幣の未来を読み解くには、
どのようにすればいいのか?

  「暗号通貨の仕組みは、現代の貨幣と
  異なります。ただし、現代と異なると
  いうことなら、過去の貨幣の仕組みも
  同様に現代と異なります。
  そして過去の貨幣の中には、暗号通貨の
  仕組みと共通点を持つものがあります。
  現代と異なる仕組みが現れつつある時代は、
  過去の出来事から多くのことを学ぶ
  チャンスに満ちています。」

実は、貨幣の「過去」を読み解くと、
貨幣の「未来」を知るためのヒントが
隠されていることがわかります。

具体的には、暗号通貨の特徴を学ぶには、
歴史上の3つのトピックに注目します。

・鎌倉、室町時代の貨幣経済

 なぜ、鎌倉、室町時代に中国銭が
 流通したのか?

 貨幣には、交換手段として誰もが
 受け取ってくれる性質があります。

 これを貨幣の一般受容性と言います。

 交換手段としての側面から、暗号通貨との
 共通点を探ります。

・徳川時代の両替商ビジネス

 徳川時代には、貨幣で決済することを
 約束として、遠隔地どうしの取引相手と
 決済できる工夫が生み出されました。

 貨幣の決済完了性という、決済手段としての
 性質から暗号通貨を学びます。

・国際金本位制

 複数の国々の通貨が共通の価値基準で
 裏打ちされると何が起こるのか?

 国際金本位制とは、金という貴金属が
 国境を超えて各々の通貨の価値を
 裏打ちする仕組みのこと。

 国際金本位制の歴史から、暗号通貨が
 教訓とすべきことを考えます。

本書では、一見、無関係そうに思える
歴史上の出来事が、実が現在の経済の仕組みに
密接につながっていることを示します。

経済学を学ぶ上で、過去の歴史上には、
考えるためのヒントが多く含まれているのです。

  「現状を改善するにせよ、時代の流れに
  対応するにせよ、結果としてどうなるかは
  不確実です。しかし、歴史の知恵や失敗を
  参考材料とすることは、不確実な要素を
  減らし、準備を整えやすくすることに
  つながります。歴史は “取引のあり方や
  値段の決まり方を切り口として、
  人間がどのような行動をとるのか” を
  探るヒントの宝庫なのです。」

本書は、経済の基礎知識から、
最新のトピックまでを「日本史」から学ぶ本。

著者は、名古屋市立大学大学院経済学研究科
准教授の横山和輝さんです。

物事を学ぶ際に、多角的に捉えると、
その本質が見えてくるようになります。

本書はまさに、それを実践している本。

意外な驚きがあり、教養を身につけるとは、
こういうことなのかと実感できます。

本書のような学び方をしていると、
本質的に似ているかどうかを見極めますから、
抽象化する力も鍛えられると思います。

個人的には、いつもとは違う角度で
経済学を知ることになり、新鮮でした。

できればシリーズとして、続編が刊行
されることを期待したい本です。

  第1章 貨幣の経済学
  第2章 インセンティブの経済学
  第3章 株式会社の経済学
  第4章 銀行危機の経済学
  第5章 取引コストの経済学
  第6章 プラットフォームの経済学
  第7章 教育の経済学

この本から何を活かすか?

プラットフォームを押さえることは、
現在のビジネスで成功する鍵と言えます。

しかし、プラットフォーム・ビジネスは
古くて新しい仕組みです。

現代のプラットフォーム・ビジネスは、
戦国時代に原型ができたと考えると、
歴史的なロマンさえ感じられます。

本書では「楽市楽座」の歴史から、
契約内容を履行させる強制力の重要性
(エンフォースメント)を学びます。

Miss a meal if you have to, but don't miss a book.

このエントリーをはてなブックマークに追加

| 経済・行動経済学 | 05:00 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

≫ EDIT

50(フィフティ) いまの経済をつくったモノ

満足度★★★★
付箋数:25

あなたは、日本で約40年間禁止されていた
アメリカ人のある発明を知っていますか?

その発明を禁止していたことは、
今でも日本の社会に大きく影響しています。

特に、女性のキャリアに関して。

そのアメリカ人の発明品とは何か?

  「育児用粉ミルクは、母親のあり方を変え、
  TVディナー(そのまま食べられるように
  パッケージされた冷凍食品)は、主婦の
  あり方を変えた。
  しかし、ピル(経口避妊薬)はその両方を
  変えた。それだけではない。
  ピルは社会も大きく変えることになった。
  そしてそれこそがピルの目的だった。」

日本で約40年間禁止されていた発明とは
経口避妊薬の「低用量ピル」のことです。

ピルがアメリカで承認されたのは1960年の
ことでしたが、日本で解禁されたのは
1999年になってからでした。

日本の女性は、避妊薬を使えるようになるまで、
40年近く待たなければなりませんでした。

しかし、男性が使用する勃起不全治療薬の
バイアグラは、アメリカで認可された
わずか数カ月後には、日本でも認められる
ようになりました。

  「日本は男女間格差が先進国でいちばん
  大きい国として知られており、女性はいまも
  なかなか職場で認められずにいる。
  その因果関係を解きほぐすことは不可能だが、
  アメリカの経験を見ればわかるように、
  それは偶然ではないだろう。
  ピルの解禁が二世代遅れれば、女性が受ける
  経済的な影響は相当なものになる。」

ピルはコンドームよりも3倍も失敗率が低く、
正しく服用するとほぼ100%に近い避妊効果が
得られます。

ピルは社会に革命を起こしただけでなく、
経済革命の火付け役にもなりました。

それは20世紀後半でいちばん重要な変化
だったとも考えることができます。

アメリカで使用されるようになったピルは、
法学部や医学部の女子学生に影響を与えました。

それはパートナーに頼らず、自分の意思で
妊娠と出産をコントロールできるように
なったため、自分のキャリアに投資できる
ようになったからです。

ピルのなかった時代は、5年以上かけて
弁護士や医師の資格をとることは、
妊娠のリスクを考えると、時間とお金の
有効な使い方ではありませんでした。

しかし、ピルが使えるようになったことで、
女性が積極的に法学、医学、歯学、MBAなどの
学位を学ぶようになり社会に進出していく
ようになりました。

一粒の小さなピルは、女性の社会進出を
後押しし、経済に大きな影響を与えたのです。

本書は、ピルを推奨する本ではありません。

経済に影響を与えた50の発明を紹介する本です。

著者は、『まっとうな経済学』が好評だった
フィナンシャル・タイムズの人気コラムニスト、
ティム・ハーフォードさんです。

  「発明の一つひとつに物語がある。
  人間の創造力の物語だけでなく、私たちを
  とりまく目に見えないシステムの物語もある。
  (中略)
  この本は、紙、バーコード、知的財産、
  文字など、50の発明をとりあげて、
  世界経済はどのように働いているのか、
  その知られざる物語にスポットを当てる。」

この本の目的は経済に重要な影響を与えた
大発明のベスト50を選ぶことではありません。

紹介されている発明品は「語るべき物語」
があるものが選ばれています。

その物語を知ることで、世の中がどのように
繋がっているかがわかり、生きた経済の
仕組みがわかります。

今では、日常に溶け込んでいる発明品には、
私たちの知らない意外なストーリーがあって、
なかなか興味深いですね。

この本から何を活かすか?

本書で紹介されているモノは意外な視点や
物語を教えてくれます。

例えば、海外に行く場合は「パスポート」が
当たり前のように必要です。

パスポートは、既にローマ帝国時代には、
似たような形があったとされています。

しかし、その評判はあまり良くなく、
20世紀になる頃には、使っている国は
ごく一部になり、パスポートは世界中から
なくなりかけていました。

  「パスポートが20世紀初めになくなっていたら、
  世界はいまごろずっと豊かになっていたのでは
  ないか。パスポートがなくならなかったのは、
  ある単純な理由からだ。
  第一次世界大戦がそれを許さなかったのである。」

Miss a meal if you have to, but don't miss a book.

このエントリーをはてなブックマークに追加

| 経済・行動経済学 | 05:59 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

≫ EDIT

世界史を変えた詐欺師たち

満足度★★★
付箋数:21

ジョン・メイナード・ケインズさん(経済学者)、
アイザック・ニュートンさん(科学者)、
ベンジャミン・フランクリンさん(気象学者)、
アラン・グリーンスパンさん(元FRB議長)。

これらの人物に共通する点は何か?

いずれもその功績によって、歴史に名を残して
いるような方々です。

ただし、偉人であることが共通点ではありません。

彼らの共通点は、本書に「詐欺師」として
登場していることです。

詐欺師と言い切ってしまうと、かなり失礼ですが、
見方によっては、実際にやったことは詐欺師と
あまり変わらないというのが、本書の著者、
東谷暁さんの見解です。

「1人を騙せば犯罪だが、みんなを騙せば
経済政策」と呼ばれることもあります。

これはチャールズ・チャップリンさんの名言、
「1人殺せば犯罪者だが、百万人殺せば英雄だ」
になぞらえたもの。

個人がお金を集めるネズミ講は犯罪になりますが、
国が強制的にお金を聴取する公的年金制度は
ネズミ講とは呼ばれません。

しかし、穿った見方でその仕組だけ見ると、
同じようなシステムに見えなくもありません。

  「政府の経済政策のなかには、明らかに
  国民の信頼を裏切ることによって、ある種の
  経済効果を生みだそうとするものが少なからず
  含まれている。
  本書は、その信頼と裏切りとの微妙な
  せめぎあいを、過去の歴史の中に見出し、
  称賛されている政策が実は裏切りであり、
  裏切りに見えたことが本来は信頼の回復を
  目指す政策であったことを発掘しようと
  してきた。」

本書では、歴史に名を残した人たちを
かなり「斜めから」見て、その手口がいわゆる
詐欺とどう違うのかを見ていきます。

紹介される人物は以下の11名です。(敬称略)

 ジョン・ロー(フランス財政赤字に挑戦した
 「賭博師」)

 アイザック・ニュートン(天才の二つの錬金術)

 ベンジャミン・フランクリン(米国紙幣の
 「父」の希望と悪夢)

 ネイサン・ロスチャイルド(ナポレオン戦争で
 台頭した金融政商)

 チャールズ・ポンジ(ただの詐欺師が生んだ
 「国家的詐欺」の手法)

 ヒャルマール・シャハト(敗戦国ドイツで
 振るった「魔術」の正体)

 ジョン・M・ケインズ(「ジョン・ローの再来」
 インサイダー取引に手を出した大経済学者)

 ジョージ・ソロス(世界の金融当局を「味方」
 にしたヘッジ・ファンド)

 ケネス・レイ(史上最大の倒産エンロンの内幕)
 アラン・グリーンスパン(バブル「形成者」
 にして「始末人」の欺瞞)

 サトシ・ナカモト(新しい通貨の「神」か、
 金融詐欺の「悪魔」か)

これらの登場人物の中で、本物の詐欺師は
チャールズ・ポンジさんただ一人です。

英語では、ネズミ講のことをポンジ・スキーム
と呼びますが、それは彼の名前に由来します。

「あなたの資金を増やします。45日から90日の
間に50%から100%の利子が可能です。」

彼はこのような宣伝文句でお金を集め、
実際には運用せず、後から集まった
出資者のお金を以前の出資者に配当して、
うまく回っているように見せかけました。

本書で、ポンジさんが紹介されてるのは、
他の人物とは違う理由です。

  「ここで本物の詐欺師を取り上げるのは、
  彼のせこい詐欺の手口や詐欺師の人生を
  紹介したいからではない。
  正真正銘の詐欺師が考えた詐欺の手口が、
  実は、いまや金融や財政の世界では、
  詐欺でもなんでもなくなってしまったことを、
  これから見ていただくためである。」

この本から何を活かすか?

本書の最後に登場するサトシ・ナカモトさんは、
ビットコインの創始者とも言われる方。

本名なのか、個人なのか、グループなのか、
そもそも実在するのか、正体は不明です。

2008年にネット上で発表された論文
「ビットコイン:P2P電子通貨システム」
の筆者名がサトシ・ナカモトでした。

  「本書で取り上げるのは、 “仮想通貨” と
  いうものがいかにいかがわしいかを知るため
  であり、また、それを称賛する自称経済学者・
  経済政策立案者がいかに能天気であるかを
  見ておくためだ。」

Miss a meal if you have to, but don't miss a book.

このエントリーをはてなブックマークに追加

| 経済・行動経済学 | 06:01 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

≫ EDIT

AIとBIはいかに人間を変えるのか

満足度★★★★
付箋数:25

人工知能(AI:artificial intelligence)の
発展は目覚ましく、2016年にはアルファ碁が
世界チャンピオンのイ・セルドさんに完勝して、
大きな話題となりました。

このままAIが発達していくと、経済活動のうち、
現在人間が担っている知的作業、知的労働が
AIに代替されていくと予想されます。

現時点でも、税理士業務やパラリーガル業務、
人材の履歴書の評価・分類や医療の画像診断
などを、AIが代わりを務めつつあります。

AIの行き着く先は、ユートピアではなく、
資本家による社会の完全支配と所得・消費の
減退による経済の崩壊というディストピア
だとも、言われています。

そうならないために必要なのが、AIによって
生み出された富を再分配する仕組みです。

それがBI(ベーシック・インカム)です。

BIは国民全員に生活できるだの現金を
無条件で給付する制度のこと。

2016年にスイスが導入の国民投票を行ったり、
2017年にフィンランドが社会実験を行うなど、
こちらも話題になりました。

AIとBIはどちらも現状の世の中を根底から
覆してしまう可能性を持っています。

AIによってもたらされる労働からの解放が、
BIと結びつくのは必然なのです。

本書は、タイトルにある通り、AIとBIが、
世の中をどう変えるかについて分析し、
予測し、メッセージを提起する本です。

著者は、経営コンサルタントの波頭亮さんです。

では、BIについてもう少し詳しく見ていきます。

BIには次の5つの制度的な長所があります。

  1. シンプルである
  2. 運用コストが小さい
  3. 恣意性と裁量が入らない
  4. 働くインセンティブが失われない
  5. 個人の尊厳を傷つけない

現在の生活保護制度では、働いて収入が
得られるようになると給付が減額されたり
打ち切られるので、働くインセンティブが
失われてしまいます。

しかし、BIは無条件に一律給付されるので、
働いて収入を得ても減額や停止がありません。

つまり、頑張ればそれに応じたメリットがあり、
頑張ることのデメリットは存在しないのです。

BIの導入の最大の課題は「財源の確保」ですが、
それ以外にも、3つの側面の課題があります。

1つ目の側面は、経済学的イシュー。

働かない者が増えるのではないかという
フリーライダー問題と、巨額の財政負担が
不可能ではないかという財政面の問題です。

2つ目の側面は、政治学的イシュー。

これは官僚が、裁量と差配に固執する
のではないかという抵抗です。

3つ目の側面は、文化的イシュー。

「働かざる者、食うべからず」という
社会通念・社会規範の問題です。

この考えは歴史的にも古く、洋の東西を問わない
普遍的に人類に染み込んでいる規範で、
3つのイシューの中で最も根深い問題です。

「働かざる者、食うべからず」という考えから、
「働かなくても、食ってよし」という新しい
社会通念に切り替える必要があるのです。

BIに関しては、政府・公的機関だけでなく、
民間企業・団体による導入実験が、
世界各地で近年行われており、
それらは、概ね良好な結果が出ています。

そして、高度にAIとBIが結びついた世界では、
生きるための労働がなくなります。

では、そうなった時に、人間は働かなくなる
のでしょうか?

  「私は、そうは考えない。 “働く必要が無い” 
  というのは “働くべきではない” という意味
  とは全く異なる。ただし、 “新しいステージ” 
  においては “働く” という言葉の意味合いや、
  人生における “仕事” の位置づけが、
  これまでとは大きく転換することになると
  考えられる。」

本書は、AIとBIのもたらすインパクトを伝え、
私たちが未来をどう生きるべきかを指南する
先見性のある一冊だと思います。

この本から何を活かすか?

ロンドンで行われた社会実験の結果は?

ホームレスへの対応と社会的コストの増大に
悩まされていたロンドンの行政は、2009年に
ある社会実験を行いました。

それは男性ホームレス13人に対して、
1人月45万円という破格の金額を無条件で与え、
それ以外のサポートは一切行わないという
社会実験でした。

1年半後、給付額は約7000万円になりましたが、
行政コストは約5250万円削減されました。

そして、13人全員が自発的な社会的リハビリや
将来の計画を立案するなど、良い方向へ
動き出したそうです。

Miss a meal if you have to, but don't miss a book.

このエントリーをはてなブックマークに追加

| 経済・行動経済学 | 06:11 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

≫ EDIT

金融排除 地銀・信金信組が口を閉ざす不都合な真実

満足度★★★
付箋数:22

  「森信親長官率いる金融庁は、銀行や信金金組が
  担保・保証に依存した取引に偏った結果、
  融資後の資金の出入状況をモニターしていく
   “途上与信(貸し出し)管理” さえも
  しなくなってしまい、必要以上に顧客との
  取引をしなくなったのではないかという問題意識
  を持った。この状況を “日本型金融排除” と
  定義し、2016事務年度金融行政方針に盛り込んだ。
  金融機関が顧客を必要以上に排除しすぎたために、
  金融仲介機能が正常に発揮されていないという
  見解だ。」

金融排除とは、収益事業を営む金融機関の
立場から見たとき、採算が合わないと
評価されてしまう顧客層に対して、
金融機能が提供されない状況のことです。

金融機関も完全なボランティアでやっている
わけではないので、ある程度顧客を選ぶことは
必要です。

問題は、その顧客を選ぶ度合いです。

金融庁は、それが行き過ぎているとの判断から、
「日本型金融排除」という言葉を用いました。

銀行を始めとする各金融機関は、高い信用力の
企業には優先的に貸出を行っているものの、
信用力はまだ低いが事業の将来性が高い企業
には融資しない傾向が強いのです。

  「多くの金融機関が顧客を見捨てる金融排除を
  極大化し、事業に寄り添い、成長を後押し
  しながら取引する金融包摂を狭くしてきた。
  その結果、利ざやさえ確保できないという
  袋小路に入り込み、ついには自らの経営自体が
  成り立たなくなってしまっている。
  金融排除という悪循環の歯車を止め、
  持続可能な循環に回転方向を変えることは
  できないだろうか。」

金融包摂とは、Financial Inclusionを
翻訳した言葉です。

通常の金融サービスを受けられない人々が、
融資などの金融サービスにアクセスできる
ようにすることとで、FinTechブームで注目
されています。

本書は、金融排除について考える本です。

金融排除を生み出すメカニズムは一体
どういうもので、なぜ拡大するのか。

歴史的な経緯はどうなっているのか。

事業者から見た金融排除の風景はどう映るのか。

本書では、金融排除と向き合い、包摂しようと
奮闘する事例を紹介しながら、特に地方金融が
活性化する方策を考えます。

著者は、共同通信社経済部記者の橋本卓典さん。

著書『捨てられる銀行』『捨てられる銀行2』が
いずれもベストセラーになった方です。

本書の最初の事例として紹介されているのは、
奇跡のリンゴ』で知られている木村秋則さん
への排除と包摂の物語です。

木村さんは、世界で初めて無農薬・無施肥での
リンゴ栽培に成功した方です。

私たちが食べているリンゴは、元々自然界には
なく、人の手で改良を重ねてきたもの。

それ故、無農薬でリンゴを自然栽培することは
不可能と言われていました。

木村さんが、リンゴの自然栽培に
挑戦し始めた頃は、収入ゼロ。

失敗を重ね何の見通しもない状態が続きました。

付き合いのあった、みちのく銀行に
事業資金の融資をいくら必死に申し込んでも、
全く話にならないと、窓口担当者から
一蹴されていました。

すると、その木村さんの様子を担当者の
後ろからじっと見て、話に耳を傾けていた、
柳谷誠係長(当時)が、何かに背中を押された
ように突然、話に割って入ったそうです。

  「私が代わろう」

そう声を掛け、柳谷さんは担当者に代わって、
木村さんの正面に座り、じっと目を見て言いました。

  「頑張ってください。奥さんの印鑑証明が
  あれば、私がなんとかします」

これをきっかけに、木村さんは何度も資金の
借り入れを行い、約10年間の苦心の結果、
ついにリンゴの自然栽培に成功したのです。

かい摘んで紹介しましたが、『奇跡のリンゴ』の
もう1つの物語として、なかなか感動的な話でした。

本書では、多くの事例で金融排除の実体を
明らかにしつつ、排除をなくす道を探ります。

この本から何を活かすか?

  「共同組織金融と称される信金信組とは
  そもそも何なのか。信金信組と銀行は同じ
  預金取扱金融機関だ。多くのメディアでも
  銀行と同一視されて認識され、報じられている。
  しかし、根拠となる業法がまるで異なる。
  つまり、預金取扱金融機関でも、本来の使命は
  まったく異なるのだ。」

本書では、いわき信用組合や塩沢信用組合など、
独自のビジネスモデルを実践する事例も紹介し、
金融包摂のあるべき姿を示します。

Miss a meal if you have to, but don't miss a book.

このエントリーをはてなブックマークに追加

| 経済・行動経済学 | 06:04 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

| PAGE-SELECT | NEXT